July 2010
July 31, 2010
ガーデンデザインの仕事は、生き物を扱う仕事です。庭の工事が終わり、計画していた植物が全部植わった時点で仕事が終わりということはなく、その後、植物がどのように生長するか、工事完了後も春夏秋冬のメンテナンスをしながら、見守って行くのも仕事です。
もちろん、あらかじめ、デザインする庭のプランツエコロジーを把握した上で、品種を選びます。しかし、予測のできない気象状況への対応など、最低でも一年はその庭につきあっていかないと庭は完成したことになりません。本当は庭のある限りずっと付き合って行きたいけれども、それでは体が幾つあっても足らないので、やはり、基本は一年から三年でしょうか。
工業製品に一年の保証期間があるように、おもに樹木主体ではありますが、植物にも一年間の枯れ保証があります。
去年7月に、箱根星の王子さまミュージアムと自由が丘カフェドイシスの庭が完成し、その後の一年間は、庭の様子をメンテナンスしながら見守ってきましたが、どちらの庭も、この一年、まったく問題なしとはいえないけれども(黄金虫や夜盗虫の大発生や突風発生等)根本的な樹木灌木の枯れはなく、一年が経過して、いま、一安心というところです。
ボタニカの庭は完成から三年が経ち、今年の春以降、デザインのマイナーチェンジを含め、私が直接庭に植物を植えたり植栽を変更するメンテナンスが終了、独り立ちがスタートしました。(実際は、全面的にQ-GARDEN さんがこまめにメンテナンスに入ってくれて、植物自身の力を生かした庭管理がされています)先日ボタニカに行った際に「子離れ(親離れ?)完了を確認。「もう、これでこの子は独り立ち」寂しい気もするけれども、心の中でお別れをしてきたばかり。上の写真がその時のもの。ルドベキアを三株ひとグループで、まとめて植え直したいなと思うけれども、それがなかなかできない辛さはありますね。お願いはできるので、お伝えしたり、ボランティア参加もできるように思います。
自由が丘のカフェドイシスも、卒業間近の庭のひとつ。庭の管理は、私が毎月行く場合と、3ヶ月おき、6ヶ月おきと、あらかじめ約束を決めるわけですが、カフェドイシスは、6ヶ月おき。この庭も1年が経過して、今、徐々に一人歩きが始まっています。
多年草の葉のフォルムの違いに着目してプランティングした庭(2010.7.30 撮影)も、まずまず。クリックして大きな絵で観ることができます。虫食いや葉焼けなどネガティブなものも見えてしまいますが。これはこの後、カットして処理しました。
こちらは、インテリアデザインが夫ということもあり、スタート時は、中も外もヨシヤテイストでしたけれども、その後、毎日の生け花アレンジや花瓶のデザイン、季節ごとの装飾などは、オーナーの好みや日々お店で働く料理長やスタッフの好みで装飾され、その点では、私の表現と異なる世界が展開中です。デザイナーから観ると予定調和ではないので、複雑な心境になるのは否めませんが、すべての建築家やデザイナーが似たような心境に陥るのは、実は身勝手な感情、なのかもしれません。
私の亡き父(建築家)がよくそのことで、ぼやいていたのを思い出します。設計したお宅のモダン家具に、デコデコのクッションが置いてあったり、無駄を完全に省いたデザインのドイツ製ドアノブにレースの飾りが付いていたり。バウハウス流のミニマル・モダン建築にレース飾りは似合わないけれども「外してください」とは、いえない。それも仕方のないことなのかなと思います。
だからこその、自分の庭。なのだけれども、まあ、なかなか思い通りに行かないものですね。ちょっとため息がでてしまう夏の午後です。
箱根・星の王子さまの庭は、まだまだ、我が子同然。毎月行って、こまごまと、際限なく手を入れる場所がある。広いせいもあるのですが、まだ箱根の生態系が把握できないせいもある。無難な植物だけではつまらないし。凄まじい風や湿気に覆われたり、土も改善が必要だし、とにかくまだまだ数年間は自分の子どもみたいな感じがしています。今後のミュージアムの予定は
★8月5日の公開ガーデンワークに続き
★9月16日、公開ガーデンワーク、翌日、17日は、秋の植物100選のオープンデイ。14時開始でバラのチャンピオン、バラのことなら何でもおまかせで、お喋りの上手な小山内健さんを大阪からお招きし、東京や大阪よりも一足早い秋の気配を感じる箱根で、
私が、秋の植物100選と丈夫で見目麗しい植物のご紹介、デザインのコツをご説明しながら、一足早い秋の箱根を味わっていただければと思います。
http://tour.club-t.com/vstour/WEB/web_tour3_tour_tmp.aspx?p_baitai_web=CTOP&p_from=800000&p_company_cd=1002000&p_course_no2=02763&p_baitai=990&x=0&y=0
みなさまのおいでをお待ち申し上げております!
July 30, 2010
梅雨あけ以来、庭の温度計はしばしば40度超し。厳しい7月でありました。今後も当分暑いだろうし、蚊が居るし、水やりをひんぱんにするゆとりもなく、最小限の水やりで、それでも美しく、ますます元気で頼もしい植物の TOP 5(独断と偏見と、自分の行動半径の栽培環境)について考えてみました。
でも、日陰を好む植物は省きます。日陰の植物は、炎天下の植物にくらべ、夏はやはり穏やかな環境にいます。ギボウシ元気であたりまえ、というわけです。
1位、バーベナボナリエンシス。特に実生で増える栽培環境、日当たり風通しの良い環境で。
以上が、眺めて楽しく、来年のありようも楽しみで、ここ数年、栽培のストレスがなかった植物です。一年草には来年がないので、排除しました。皆様のお庭の「日向のおすすめ多年草」ご意見などお寄せいただきましたら、また、それも参考に随時、ブログ更新したいと思います。
来週、8月3日(火)、北海道・国営すずらん滝野丘陵公園で、コンテナマスターさんの講習会。
8月4日、渋谷のNHKエデュケーショナルで来年の国バラの作戦会議。
8月5日(木)に、箱根星の王子さまミュージアムにて、終日公開ガーデニングワーク。光が美しくなる午後3時以降には、ショウウインドウの妖精を取り出し、お庭で撮影をする予定です。一緒に撮影可能です!
さて、iris garden サイトより、新規会員さま向けプレゼントのお知らせです。リンク先は以下です、よろしくお願いします!
http://www.iris-gardening.com/event/20100721/
July 28, 2010
先日、猛暑のまっただ中、サントリーナを買ってきました。いえ、ギリシャのサントリーナ島ではなく、植物のほう。近所の園芸店で380円。で、ひと株買ったらおまけに二株頂いた。もう、売れないかもしれないからってプレゼント。
ルーフガーデン用に乾燥に強い植物を探していたのですが、これって湿気を嫌うので、普通の日本の庭の条件では厳しい植物ですが、乾燥には強い。
今まで、なんどもダメにしてきた経験だけは豊富なサントリーナ。ロンドンでも東京で地面はもちろん、最高級の土を使ったコンテナでも、失ってきた。なので、ここ数年欲しい思っても、手がでませんでした。
秋〜春はともかく、梅雨〜猛暑と続いて黒くなって根腐れしておしまいだったのです。
ちなみに左の写真はわがルーフガーデンにやってきたサントリーナ、空の青さがちょと違いますが、たしかに強光線に似合います。
(その後コメントを頂きましたが、懲りもせずサントリーナを買い求め、夏にダメにしてしまう同朋が少なくないことを知り、妙に嬉しくなりました)
数年前の夏、ギリシャのサントリーナ島を訪ねました。そこでの体感気温以来、その原産地名を冠したサントリーナを日本で育てるなんて無謀もいいところだと気づいたんです。とにかくかの地は、カラッカラの天気。パリパリに肌が乾いてドライエアそのもの。それでいて、8月だというのに、汗で肌がベタつくことはなく、長袖で心地よく日陰は涼しく快適。
問題は、なのに、どうして日本で売られているのだろうか。今でも不思議。冬も見目麗しく、箱根(湿気の王国!)では、なんと秋に植えて見事に綺麗なフォリッジを晩春まで膨らませた。でも、夏前にお陀仏。かわいい黄色い玉っころみたいな花の開花は観られなかった。
この写真は糖度が高いことで有名なサントリーナ島のトマト栽培地。ほとんど砂地の、カサカサの地。葉も茶色でチリチリ。見た目はよくないのですが、命ぎりぎりで甘くて美味しいトマトができあがるという訳。そういう生態系で育つ美しきおいしきもの。
この断崖に生き生きと生命を謳歌しているサントリーナが生えています。で、これ、ひょっとして我が家の屋上でうまく行くのか? そう思った私が甘かったか、図星だったかは、また後日に白状します。しかし、植物の原産地を体験することはとても有意義です。頭で覚えるのではなく、体感したプランツエコロジーはそれを日本に当てはめる際に、その正解率が上がります。
観光で行くには、美しく食べ物美味しく、人なつこい現地人の多いギリシャ。経済が破綻しようが、雨がまったく降らなかろうが、美しき青い空と独特の建築様式のこの景色が永遠に旅人を魅了します。
私自身、心根の最も深いところでもっとも引かれる美術がギリシャ彫刻と神殿建築なのですが、これが、奈良の美術と繋がって、親しみの念を持って双方を眺めていると不思議に先祖供養をしているような気になるのです。
夏が来ると思い出す、ギリシャの海、白い島。
と、鼻歌を歌いながらも蚊に食われ水やりをする朝であります。でも現実は
ちょいと一杯のつもりが.....。いつのまにやら1時間、気がつきゃヤブ蚊に十カ所も食われ、これじゃ気分のいいわけないよ。わかっちゃいるけどやめられないと植木等さんのスーダラ節で幕開けする朝の水やりでした。ヤブ蚊さえいなければ、ガーデニングはもっと気楽なのに。毎朝重装備で水やりするのはちょいとばかり気が重いですね。
July 27, 2010
コメントをたくさんいただいて、誠にありがとうございます。相変わらず暑いですね。雷鳴は聞こえるけれども雨降らずで、水やり大変です。
(各編集者様宛/暑さゆえか、仕事の効率が上がらず、原稿書かずにブログ書いててスミマセン)
戴いたコメントで、興味深かったのは、月でガーデニングの項目より。F さんから「千葉の実家の88歳の現役農婦の母も何月何日に何々の種を蒔くと絶対に虫が付かない、という様な話をよくしていました」Fさん、それは素晴しい話! 具体的にそのメソッドがわかると凄いですね!いつかお母様に具体的に次はいつ何を種まきするといいのか、伺ってください。きっと、知りたい方は少なくないはずです。
元ソムリエのPさんからは「ぶどうも月の満ち欠けに合わせて手入れをする人々がいます。何だか魔女みたいな方法と思っていたのですが、ガーデニングもその流れが来ているのかも知れませんね。面白い...」
プロヴァンスの美花ちゃんからもコメント貰いました。ありがとう。「ビオディナミ農法というのは天体と土地が互いに呼応し合う関係の中で行われる農業でワイン作りでもフランスで実践しているところがあります。主人はいつも満月が終った後に髪を切るようにしたり、子供たちが興奮しているのは満月だから当然だと、プロヴァンスの人は天体に敏感です。ビオディナミ農法は500年もの昔から経験的に語り継がれ、ドイツの人智学者ルドルフ・シュタイナーが書いた本もでています。かなり奥が深いです」
ふ〜む、シュタイナー理論まで、でてきちゃたぞ。この世界本当に奥が深いですな。あの、高島歴とかを見ても、種まきなどの好適日が掲載されて、あれが気になっていたんです。まあ、どこまでか?賛否両論でしょうが、月の満ち欠けと地球の生物の動向は、関係があるはずです。
また、春夏秋冬、いつどのタイミングで種まき、球根植え、苗ものの最終植え付けをするかも大事なことで、その点、春や秋は新たな植物を植えるのに適していますが今は結構難しい。遅植えしたアンゲロニアの根張りが悪く、ハラハラ、根が浅いと乾燥が早く花付きも悪い。だからこそ、この秋は何植えよう!と今からワクワク。
それにしても、私、満月の夜は落ち着きません。これって何なんでしょうか。月光浴なんて、かなり気持ちいいし。満月の夜は息子と二人ででも、屋上でサマードリンクしてます。線香花火がお供です。
HIGHGLOVE チャールズ皇太子のビデオを拝聴し印象に残ったお言葉。
ガーデニングは FEED TO MY SOUL
これは同時に風の音、雨の色、朝日に夕陽に満天の星。そんなものと過ごす時間のこともさすのかなとも思うのです。暑さにかまけてエアコン生活に溺れそうですが、ダラダラ汗でも、本来のエコロジーに体を預ける時間も大切ですよね。だからこそ、メリハリを! そして、汗だくガーデニングには、必ずトリートタイムを。
July 26, 2010
このたびのツアーで寄るつもりが、暑さも手伝って予定を端折ったので、帰国の前日、夕食の後に立ち寄りました。
これで、午後9時ころ。かの地に住んでいた時代、家から歩いて5分だったハムステッドヒース、ゴルダーズパークに次いで、車で15分ほどの距離にあるここがもっとも、季節ごとの花が美しくて、私はこの公園を愛していました。ほぼ毎週のように通っていたのです。
それで、7月11日に久しぶりに訪ねたときのこと。有名なバラ園はその見頃を終えていましたが、暑い日だったので、目に涼しい、こんな池の景色に気持ちが惹かれました。それがこの写真ですが、いつまでも眺めていたい景色でした。
バラはもちろんのこと、花は見頃を過ぎてしまうと人の興味をそそらないのがたまにキズです。だから、花が咲いていなくても興味をそそる植物に軍配が上がってしまうのはこんな時。
左の景色、クイーメリーガーデンズカフェの花壇は、ここ数年、夏はまったく同じ植栽です。バーベナ・ボナリエンシスとエリンジューム、スティパ・テヌイシマ、そしてアリウム、この4種はベスチャトー・ガーデンのドライガーデンでもおなじみの品種たち。要するに、水やりをしなくても、花がら摘みをしなくても、一度植えたらそれっきりで秋まで放置できるような雰囲気の植栽。これ、湿気が強いとうまく行かない植物ですが、まさに「テクスチャーの植栽」急に気温が上がり、ほかの花壇はあまりきれいではなかったけれども、こういう箇所の魅力はイギリスならではのテイストを感じます。これ、東京ではこうはいかない。
10年ほど前からセミトロピカルガーデンに注目が集まっています。グラス類、ダリアやカンナの他、ここに映っているのは、珍しい銅葉のバナナ。葉の彫刻的な造形だけでもダイナミックなおもしろみがあり、実は私、このコーナーが見たくてリージェンツパークに来たのです。温暖化の進む公園緑化で何がふさわしいのか。ロンドンの公園も予算削減に悩んでいるのは解っていましたが、やはり、管理費をしぼるのは今のご時世。そんな中、ローメンテナンスでたくさんの人の目を楽しませる植栽とは、どんな?
そのあたりを皆さんに見学しながら解説したかったのでしたが、この庭は個人でも訪ねられるからわざわざバスで立ち寄らなくてもいいですよ。との、声あり。最もだなと思い、最後に個人的にタクシーでやってきたと言う訳。
目に楽しかったのは、グラウンドカバー植物で構成されたガーデナーのオブジェ。
おもに、セダム、アジュガ、そして、周囲はグラス類、ゼラニウム、マリゴールドなどでシックな色味。
公園は、植物の姿で人の心を癒すのも大事な役割。このようなかわいいオブジェがあると嬉しいですが、どのくらいの耐用期間があるのだろうか。
何も派手な花壇を作るばかりがガーデンではないし、ここには、おもてなしの心なども感じた。
公園はみんなの憩いの場所ですが、美しい花壇が多いクイーンメリーズガーデンズは、わんちゃん立ち入り禁止。
普通はパークどころか、バスなどの公共交通もわんちゃん可なので、立ち入り禁止は珍しい。そんな禁止の札も、文字だけなら心が緊張してしまうけれども、思わず心がほぐれるような写真付き。
眺め、ビジュアルな効果って、本当に大きいと思う。
ブログもきっとそうですね。
写真があるかないかで印象がまったく変わってくるでしょう。
美しい庭を作るためのトレーニングは永久に終わらない。