新年・時差ボケとの戦い
最後の滞在地、フィレンツェでは最初の6日間、雨が降りっぱなし。
アルノ川を濁流が轟々と流れ、テレビのニュースが各地の水害を
伝えていた。街の中を船が進む景色。
地球温暖化の厳しい影響を予感する年明け。でも、帰る日は
涙が出るほど美しく晴れた。
フィレンツェの街は、この瓦のオレンジ色と
ブルーの空とのコンビネーションが素晴しい。しかし、ずっと
今までの景色は黒と灰色で暗いモノトーンだった。
ガーデニングをしていると、常に天気に神経質になる。
そして「観光」イコール=光の観賞。光がないと、観光もつや消し。
だからせめて最後の日に、こんな景色に出会えて幸福に思う。
もう二度と息子を連れてベネチアへは行けないと思う。かなりの
無理をして旅立った。そして
彼が大人になったころ、ベネチアは水没しているかもしれない。
先のことは何もわからない。
フィレンツェから、トランジットで立ち寄るフランクフルトまでは
二時間近く。40分も遅れて出発したルフトハンザ機で、
アルプスの山を越えるとそこは、ドイツ上空。ここでつくづく
思ったこと。
ヨーロッパは地続きなのに、見事に違う文化を持つ。そして
それぞれの国が、それぞれの文化を美しく維持している。
食べ物もそれぞれに違い、それぞれが美味しい。素晴しい。
イタリアにしかないものは多い。古くて小さな店。
最後の日、トルナブオニ通り、宝石のポメラート向かいの
PROCACCI へは家族と離れて一人で行った。このカフェは、年配の
マダムが一人で行くのにピッタリ。ここのパニーノは世界一だ。
朝からディギスタシオン(味見)でトスカーナワインを一杯。
クレメカラメルも濃くて美味しい。それにはエスプレッソ。
これで寿命が短くなったとしても仕方がないと思う。
上手に長生きするのが難しい時代でもあり...。
さて、凄い大荷物で無事帰国したけれども、案外大したことはない。
でも、嬉しいのは「香りの記憶」
それは自分と、その場所と、その時間の記憶。
1561年から続く、サンタマリアノベッラ薬局は、
美術館のように美しい薬局だ。欲しいものが最初から何もなかったと
しても、中に入ると何でもいいから買って帰りたくなる。
これは、サンタマリアノベッラ薬局の ポットポプリ。
お茶、はちみつ、食後酒など、化粧品以外にも生活を豊かに
してくれるハーブ製品がたくさん。なかでもここで調合される
香りは素晴しいものが多い。
記憶中枢をもっとも強く刺激するのが「匂い」だといわれる。
スパイシーなハーブの香りが 旅の記憶を鮮やかに蘇らせて幸せになる。
しかし、東から西(日本)へ戻るアメリカ旅行と違って、
西から東へ戻るヨーロッパの旅は、帰国後の時差ボケが酷い。
(夕陽を見た後、ひたすら夕陽に向かう感じ)
時計の針を8時間も早回しして現実に戻らなければならないからだ。
一度、全部西回りで旅してみたい。ヨーロッパからアメリカに渡り
アメリカも東海岸から西へ飛ぶ。そうすれば早寝早起きが身につく。
今は遅寝遅起きの時差ボケ。一日が無駄になりそうで慌てる。
こういうときは、どんなに辛くても、朝は明るくなり次第起きる。
でも、それが本当に辛い。親子で時差ボケ。息子は
「ぼけ時差のせいでぼうっとするよ〜」などと言っている。
とにかく、
昼間の光を目のなかに入れる。園芸作業などは好都合。
幸い、東京はよく晴れて明るい。この光をたっぷりと取り入れて
仕事を始動!冬はわが家の台所が一番明るい季節。