吉谷桂子のガーデニングブログ

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June 01, 2010

庭における色彩の話

久々に庭のデザインの話題を。

といっても、ipad がおもしろくて、3分くらいで描けてしまうイラストを使って、庭の色彩計画の話題です。


9私、花は紫〜青などの寒色が好きですが、花色が緑の葉色と同系色の景色になり、庭の印象が地味になりがちなので気をつけています。不特定の他人に見せることを前提にする公開ガーデンなら、花や葉っぱの色は、寒色と暖色、意識してメリハリよく使い分けることで、見る人にいっそうの満足感を与えることができるはずです。おしゃれでセンスがよくても、花の色が地味だと、なんとなく、写真写りが悪くて損です。しかし、センスがよくて、華やかなら素敵ですが、悪趣味で派手なのは逃げ出したくなります。パチンコ屋さんみたいな花壇は辛い。


10例えば洋服を例にとります。私が個人的に好きな色は、ちょっとくすんだ暗い色。複雑なニュアンスのあるグレーなんかが好きだけれども、そんな服を着ると、自分の存在自体がくすんで感じる。パリの街でそういう色を素敵に着こなす女性を見かけると真似したくなるけれど、浅黒い顔色の私にはやはり、似合わない。だから講演会や雑誌の撮影などでは、なるべく華やかな色彩の服を選ぶ。真っ白とかもいい。要するに色彩の明度、彩度の明るい服。同じように、庭も、好きな花色というより、元気の出る色、落ち着く色というように「ポジショニング」「組み合わせ」で考えると、メリハリがでます。 上記の2種類のイラストを見ながら、また、下記のイラストでご説明したいのが、膨張色と縮小色。寒色やくすんだダルトーンの色は、暖色で明るい色に比べて、奥に引っ込んで見えたり、小さく見えます。
そういうセオリーをまったく考えないで先着順に花を植えるとトッチラかった庭になってしまいます。


8絵画的常識でいうと、左のイラストAのように明るい大きな花を奥にして、手前を暗くて小さな植物にすると遠近感が逆転します。
Bのように、手前に明るく大きな花、奥に暗い色の小さな植物を配置することで、まとめやすくなります。しかし、このセオリーを認識した上で逆転するのもありです。コンポジションが美しければ、抽象絵画のような庭の表現も美しいからです。しかし、それは、実際にその庭を作る人にアートの素養がなければ、かなり難しい。ということは、教科書的な庭における図像学をきっちりマスターしてから、自分らしい世界に挑戦しても遅くない。

IMG_4222この寄せ植えは黄色系の膨張色の暖色ですが、同じ黄色でも、彩度が違います、鮮やかvividな黄色のほうが飛び出して見えるし、クリスプ(ピントがカリッとあっているような感じ)に見えます。優しい黄色の方がソフトフォーカスの効果でふんわりして見えるので、そうした遠近感が写真の上でも決まりやすくなっています。無意識に寄せ植えされたでしょうが、絵画的なコンポジションの完成度が高いといえるでしょう。


IMG_1373私は黒い服を着ているのが一番安心します。黒は縮小色でちょっとは、痩せて見えるから。この写真は庭の設営中に撮ってもらったのですが、手前はwarm 奥は、グリーンとかパープルやブルーの(写真ではよく見えていないけれども)縮小色。それで色の配置でもって、私が「黒い服(縮小色)」で遠近感のつもり。ただでさえ体の大きな私が、同じように膨張色のピンクなど着てここにいたら、遠近感が狂っていたでしょう。

IMG_3849ゴッホの絵は絵画セオリーの 教科書。 まさに飛び出す色と引っ込む色、暖色と寒色、花の大小のコンポジションのバランスが絶妙で、とても吟味されている。こんなコンポジションを参考にすると、楽しい寄植えができます。自分の枠から少し成長できる。

好きな植物やちょっと興味を持った植物だけを植えた庭は、絵になりにくい。ポピュラーな植物、日本原産の丈夫な植物に、絵になる脇役の植物も多いので、その中からでも、好きだと思う植物の補助的な役目をする植物を選ぶと良い。地味な花には、明るい葉群。派手すぎる花には、銅葉の葉群など。最終的には、植物や構造物との複合要素のハーモニィ。そのためには日頃から、たくさんの美しい絵や写真、音楽を聴きながら、この作品のどこがどのように美しいのかを、こと細かに解析するクセをつけると、うっすらと体積していく素養によってなにか素敵な世界が出来上がる。植物の栽培がうまいだけでも、デザインセンスがあるだけでも、庭は完成しない。その両方を兼ね備えるのは本当に長い道のりという気がしますが。でも、実際に凄い作品や庭は、スピリチャルな存在なので、それだけは、じっと見てても真似ができない。しかし、それを見るだけで不思議に元気がでるのですから、それも何か心の栄養。可能な限り、美しいものは見ておきたいですね。素晴らしい絵や庭の本物を見に行けなくても、写真などを穴の開くほど眺めています。一枚の写真でも、正味10分もあれば、穴が開くほど インプットできるようにも思います。音楽は車のステレオ。美術は、印刷物。それでも、それを受け止める私たちの心のスポンジが豊かであれば、毎日、少しづつでも、前進することができます。



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    プロフィール

    吉谷桂子

    (よしやけいこ)

    東京生まれ。英国園芸研究家、ガーデン&プロダクトデザイナー。

    7年間の英国滞在経験を生かした、ガーデンライフを提案。TV番組や雑誌等での企画、出演、講師を務める。また、国際バラとガーデニングショウや東京ミッドタウンのコンランレストラン「Botanica」の植栽デザインを担当。

    「吉谷桂子のコンテナガーデニング」(主婦の友社)他、著書多数。

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