庭女子におすすめ、モリスの150年
先日のサンダーソン展に因む記念イベントで、私がお話したこと。少し文章にして残しておきたいと思い、ブログへ。その後、多くの参加者さまから、ありがたい感動のリアクションをいただき、嬉しいかぎりです。
このイベントは英国サンダーソン社の創立150周年を記念したイベントでしたが、私が英国のテキスタイルデザインに関しては「好きだ」という以外に、たいした事情もわからぬままにトークショウを引き受けてしまった手前、どうするべきかと、150年前のイギリスと日本を比較してみるところから調べものが始まりました。1時間でみっちり話したことを文章化するには、その何十倍もの時間がかかりそうですが、参加できなかった方々のためにもトライしてみます。おつきあいくだされたら嬉しいです。
今から150年前といえば1860年です。坂本龍馬の暗殺が1867年ですから、幕末の日本が倒幕騒ぎで動乱しているときに、すでに英国では中産階級向けの室内装飾のための美しいファブリックがデザインされ商品化されていたというわけです。モリス商会の創立が1861年、その頃、最初にデザインされたのが、この写真の"デイジー"タイル。
このとき立ち上がったアーツ&クラフツ運動は、産業革命の反動として大量生産に対する「手作りの工芸作品」を擁護するだけでなく、工場地化、宅地化で失われて行った自然への保護運動の意味も含まれ、いわばこのデージーは、ただのかわいらしい花柄というだけでなく、英国のネイティブプランツとしての象徴の意味も込めらたのだそうです。モリスは「花にも下品な色がある」と言っています。園芸品種で改良されたけばけばしい色彩のゼラニウムを非難する一方、野生植物にけばけばしい色はなく天性の気品を備える、と指摘します。写真は5月の森に咲くブルーベル。
バラの花に止まるコガネムシを見るとおぞましい気持ちのする私ですが、この模様の中には、ツグミもいます。今にもバラの葉っぱにいる何かを食べるような。(写真一番上)「本物の園芸家は野鳥への思いを馳せる」とモリスはいいます。野鳥が害虫を食べてくれることをモリスはこの時代から唱えていたのです。このことから、このバラの絡まるトレリス柄には、人工のトレリスとオーガニックな自然の循環がさりげなく描かれ、サステイナブルなエコロジーが描かれていることがわかります。
花柄に鳥。「花鳥風月」は日本の伝統柄ですが、この英国の室内装飾の模様の中には、原生フローラが咲き、それを目指して虫が集まり、それを狙う野鳥の図が描かれ、自然界の天昇輪廻というと大げさでしょうけれど、理想の循環が描かれているのです。私もいろいろと文献を調べてみるまではわからなかったのですが、ただの模様ではないということがわかってきて感動でした。
モリスは「ここに人間が住む以前(イギリスの産業革命以前)、大地には、豊かに草花樹木が茂っていたことを忘れるべきでない」とも。
英国の暮らしにおける「花柄」。それは、ただのかわいい模様ではなく、自然に対するリスペクトでもあったのです。
さらに「日常生活の芸術こそが芸術のもっとも偉大な側面である」と語るモリスに多大な影響を受けたのが、かのガートルード・ジーキル、花の庭のカラースキーム、イングリッシュガーデンを生みだしたその人でした。
さて長くなるので、この拙い文章の修正と続きはまた明日にでも、今日はこれより子どもと映画館へ。ハリーポッターを観にいきます。その後の「おめでとう」と激励のコメントありがとうございました。......日本の園芸術文化向上を目指して!