モリスと野鳥と英国と
モリスの生地なり壁紙なり、そのテキスタイルデザインは、一瞬みただけで好きとか嫌いとか、それはそのひとなりの好みもあるでしょうが、私などは、若いころはあまり好きじゃなかったです。美術大学では授業でも習いますから、学生時代からその存在はよく知ってはいましたし、時に目にすると「あああれね。知ってるわ」くらいの感じ方だったといいますか。
凄いメッセージだ!素晴しい。良い!と心から思うようになったのは、実は40代後半からです。家を建てる年齢になってからというか。英国に関する造詣がちょっとは深まってのち、というか。物事への見る目ができてきたというのか、同時にモリスに関するアーツ&クラフツ運動の本質を知ってのちというか。
モリスのが残した名言はたくさんあります。なかでも私が気に入っているのは、「人類に最も重要で、もっとも求められている大切な芸術は何か? 答えは、美しい家である。そして美しい家は庭をまとっていなくてはならない。家のインテリアは庭の連なりになるように」
この言葉を自分の人生の理想として、その自分なりにそこに近づけるよう模索してきた。
そして、冒頭の「一流のガーデナーは野鳥に想いを馳せるべし。」
には、一本とられた気分。ガーデナーが自然と共生しながら庭の存続ノウハウを決めるシンボルでもあるかなと。
そのことへのオマージュで作ったのがこの帽子。ミセスの記事のために作りましたが、この帽子の名前もそういうわけで、「野鳥に想いを馳せるべしハット」です。
今までなんども目にしていながら、進んで好きだとは思わなかった色柄でしたが、意味を帯びてくると見え方が変わるから不思議です。
自然と共生させながら庭を作ることを奨励したモリスらしい模様ですが、こういう発想が、今から150年も前にできていたこと自体、凄いですよね。 そういう英国の文化。その英国で、今、暴動が起きているのは悲しい。階級も人種も違う人たちの世界でおきている、と、思ったらそれまでですが、ヨーロッパにも崩壊の兆しが忍び寄っているように思えてならない今日この頃です。