命と美
ここ数日、朝晩が凌ぎやすく感じています。
さて
ずっと、思っていたことなのですが
戦後の日本で、ないがしろにされがち、だったのが
「美」では、なかったでしょうか。
「美」よりも大切にされたのは「経済効率」や「利便性」でした。
英国に住むことにしたのも、思っていた以上に、住んでみて常に感心したのが、利便性よりも、美を優先していた英国人の感性でした。便利さよりも気持ちの良さ。品のよいもの。美しいもの。壊れやすいものや、長く遺して行きたいものが、実際に、大切にされていました。
そろそろ、日本でも
効率だけを優先するのではなく
美も同時に優先した生活の方法を
もっともっと、多くのひとたちが求める時代になってほしい。
と、改めて思うのです。
今は、顔や身体の美容とか
ファッションには、かなり意識が高まっていますし
食への興味も頂点かと思います。
しかし、おいしくて安全な食事を求めるのと同じように、グッドテイストのインテリアや身体に良い家作り。
最高に肌触りの良いベッドシーツを求める気持ちとか。
植物を植える植木鉢、少し高価だったとしても、それを選ぶ価値観とか。
そういうことを、日本では、少しでも、安く済ませようとする傾向が強いのは何だろう。と、ずっと思っていました。
(故・馬場浩史さんの主催するスターネットで個展をしたときの、夫、吉谷博光がデザインによるハンギングコンテナです。非常に美しいと思っていましたが、売れませんでした)
現代。衣食住のうちでも、衣と食は、とても人気の高い項目です。
わかりやすい項目なのかもしれません。
しかし、私は「衣食住」のうち、最後に来る「住」も、ほかのふたつと同じように大切だと思って今まできました。だから、英国に住んだのでしたが、かの地は「衣食住」のうち、住がもっとも大切にされていると感じます。
今、自分がしたかったことのひとつで、洋服のデザインをしていますが、人の暮らしに一番大切なのは、基本的に、住。だから、住、食、衣 の順番が正しかろうと、思っています。
「住の美」は本来、魂への影響を、深く大きく与えるものだと思うからです。
すまいの美は、というと、また、ウイリアム・モリスを憶います。それはインテリアから庭につながり、街の景色へと広がる。
実は、ファッションブログにはすでに書きましたが、この夏
社会人になって以来の33年間、古い友人であり
暮らしの「美意識」の象徴でも
あった友人を亡くしました。
彼は、日本のモリスになりそうなひとでした。
あれほどに、衣・食・住 のすべてを、一貫して、美しく、しかも個性的独自的に、日本的に、表現できるひとはいませんでした。
この国が、イギリスやフランスのように、美意識の高い生活に対し尊敬を払う国民性があったなら、
彼は、さしずめ、スーパースターだった。と思っていました。なにも、メディア上で有名になることだけが、スターではないから。
でも、いずれにしても。彼が作った益子のスターネットは、本物。オリジナルです。独自で、美しい。
ぜひ、彼の遺した傑作 starnet を訪ねてみてくだされたら、嬉しいです。大量生産のできないクラフトワーク、生活の美しいもの、心地よい衣、身体によい食べ物。そういう衣食住が、そろっています。