吉谷桂子のガーデニングブログ

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August 20, 2013

旅行から1ヶ月:5

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イギリスの庭の記憶...。なんだか、日本の夏があまりにも暑いので忘れそう。

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いえ、今私はスケジュールを詰め過ぎで、暑いどころではなく仕事のことで頭がいっぱいかも。

でも、それで忘れてしまう前に....。

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そして、ジェームス・ダイソン卿とチャールズ皇太子のプライヴェイト・ガーデン。どちらも写真がないので、説得力に欠けますが、本当にみごとな庭でした。

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(せめて途中の風景を)

庭は、その姿、花が咲いているかどうかなどの、表面を見るものではなく、そこに暮らすひとの心が求めるものがそのままある。そこをどう見据えるか。

どちらの庭でも、「ひとりの人間が生きている」そのための装置でもあるなあと。そんなことを、まさに強く思いました。

ジェームス・ダイソン卿には、何度かインタビューをしたので、そのほんの一部を抜粋したいと思います。集英社メイプル誌や、文化出版局ミセス誌上から。


ガーデニングの面白さは、

予想外のことが起きること。そして

自分が死んでも、庭は残る。(ジェームス卿)


これまでの常識を覆す、

未来的な庭と、伝統の庭と

 

吉谷 ダイソンさんが2003年のチェルシーフラワーショーで発表された「The wrong garden」はとても未来的で面白い発想の庭ですね。(この庭によってダイソン氏と庭園デザイナーのジム・ハニー氏はシルバーギルトを受賞、バーミンガムのフラワーショーではゴールデンギルトを受賞)
 

ダイソン ありがとう。そう、あれは、これまでの庭の常識を覆そうという発想でデザインしました。緑も花もなくて、水は下から上へ流れる……。
 

吉谷 どうして下から上へ流すことができるんですか?
 

ダイソン 種明かしをするとね、水はガラスの滑り台を、実際は下に下がっているんだけど、ガラスの下面に通り道を作って、ポンプで泡だけを下から上へ押し出しているから、水が上がっていくように見える仕掛けなんだ(笑)。
 
 

吉谷 ダイソンさんも、ガーデニングはお好きですか?
 

ダイソン 僕も小さいころからガーデニングをしてきました。イギリスの男の子の多くはそうだと思うんだけど。ガーデニングの面白さは、予想外のことが起きることだと思うんです。二百年生きた木が、突然、死んでしまったり、思わぬところに思わぬ花が咲いたり。そして自分が死んでも、庭は残っていく。それはとても楽しい想像なんです。ものを作り出す情熱という点では、掃除機などのメカも、庭ととても似ていると思っています。

 

吉谷 ほんとうにそうだと思います。
 

ダイソン 僕はこれからも掃除機に改良を重ねていきたいと思っていますし、まだシークレットでお話できない面白いプロジェクトもいろいろと手がけていく予定です。そして庭に関しても、僕は、毎朝、ガーデナーたちと必ずミーティングをしています。今日の作業はこれとこれ、というように指示するのです。子どもの頃のように、自らが庭に出て土をいじることがなくなってしまったことはとても残念ですが、そうすることで、この庭にも、僕の血液が通っていると実感しています。
 

吉谷 庭はその人の個性が出る、とてもパーソナルなものなのだと思います。
 

ダイソン そうですね。先ほど、あなたは、伝統的な庭をどう思うかとおっしゃいましたが、僕の庭は、実は、18世紀の造園家、ケイパビリティ・ブラウンの設計です。荒れ放題だったのを、最初に彼が作ったときのものに近づけようと試みているところ。ただ、一部はあくまで僕らしく。伝統とフューチャーデザインがうまく混ざり合っているのが理想です。
 

吉谷 それは素晴らしい! 私の想像をはるかに超える庭ですね!ぜひ、お庭をみせてください。

 

 (と、インタビューの後、実は、インタビューをしたダイソン社本社から車で30分ほど離れた御自宅の庭の見学に。ここでも写真はなしで、とても残念です)

対談を終えて

 

あの掃除機は、少年の純粋なココロザシが形になったものだったと合点がいきました。今まで以上に掃除が楽しくなりそうです。さて対談後、ダイソンさんは、約束通り庭に連れて行ってくださいました。設計したランスロット・ケーパビリティ・ブラウンといえば、英国の国宝級の庭で有名な造園家です。ダイソンさんは、失われかけていた風景式庭園を屋敷ごと修復している最終段階だったのです。庭を眺めていて胸がいっぱいになりました。それはいつか見た18世紀の銅版画に描かれていた庭と同じだったから。「あの絵と同じ!」と叫ばずにはおれませんでした。18世紀の景色を21世紀の未来的デザイナーが復元している現場だったとは! モダンか、クラシックかなどと次元の低い質問をした私が恥ずかしかった。これぞ、伝統を重んじる英国人の姿。本質を追究する正真正銘のクリエイターと出会えた思いでした。ダイソンさんが心を開いてくれて、心から感謝です!


ちなみに、お好きな食べ物を伺うと....。

●食べ物

・南仏産のピショリーヌ種のオリーブは、小さくて香りもよく大好きだ。プロバンスのオリーブはかなり硬めで、味も濃く、ニース風サラダには欠かせない。面白いことに、オリーブの木も水をやってはいけない。

・Duchyオリジナルのジンジャービスケット。とても軽く、さわやかなシトラスの味がして、いくらでも食べられる。

・ジャスミン茶。抗酸化作用が高く、とても心が落ち着くので、寝る前に1杯飲んでいる。

・新鮮なフルーツ。だいたい1日5個以上は食べている。そのおかげで忙しい毎日を乗り切れる。

・ゆで卵。放し飼いでニワトリを飼っているので、朝、取ってきた産みたての卵を朝食で食べるのは最高だ。

・そして朝食の仕上げは、しぼりたてのグレープフルーツのジュース。

・デーニッシュペーストリー。まさに堕落。アーモンドが大好きなので、アーモンドクロワッサンが大好物。

・しょうが。英国ではジンジャーはビスケットやケーキなど甘い物に昔から使われていて大好きだ。でもお寿司屋で食べる酢漬けのガリも好きだ。

・トリュフ。キャビアと並ぶ珍味。ふわふわのオムレツに入っているとおいしい。でもめったに食べられないごちそう。
 

 

 お好きな食べ物を伺うだけでも、その方の趣味の良さやライフスタイルが忍ばれて興味深いことです。私もピショリーヌのオリーブやハイグローブのジンジャービスケットが好きだなあ。

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 ケーパビリティ・ブラウンの風景式庭園を再現しつつ、随所にモダンなテイストの感じられるお庭でした。


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そして、今回の旅のハイライト。

HIGH GROVE。素晴しかった、あの庭を流れる独特の空気。何人かのデザイナーが入っているので、その個性もおもしろい。前日に見学をしたバナーマン・デザインのほかに、ウォールドガーデンは、ハットフィ−ルドハウスのレディ・ソールズベリー。ローズマリー・ヴェレィ女史も関わり、ほかにクリフトンナーサリーのマイク・ミラーなど、かなりの人々との共同作業であることも、庭にバラエティ感がある理由。

この庭は、1980年から、皇太子自ら、作り始められたとのこと。オーガニックな方法ですべてが管理されていることも有名です。

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これは今回、実に、旅行社のセブンカルチャーさんが頑張ってくれた。その旅の組み立ての一番の頑張りどころが、この企画の実現だったかなあと思います。

それは、普段、団体旅行とか絶対にしないと言う方にも、結局、グループ旅行の16名以上じゃないと予約のパーミションがでない 庭とか、見学の方法があるので、そこを旅のツボとしている。

アフタヌーンティー&シャンパン 付きのHIGH GROVE見学は、個人では受け付けていないので、これも実に贅沢な体験でした。

気になるアフタヌーンティー&シャンパン 付きのHIGH GROVE見学のお値段ですが、ひとり、75ポンド(日本円で 11.500円 くらい-)と、安くはありません。なので、ほかのグループ(英国人のグループ?)も、大変お上品なアウトフィットでいらっしゃった。

こういう場所は、絶対と行って良いほど、白っぽい恰好で行くべきものだと改めて感じました。

同じシャンパンを頂く空間におられた、英国の紳士の方々は、暑い日だったけれど、白い背広をしっかりと着込んでパナマ帽でおしゃれでしたし、女性はだいたい明るいパステル色のワンピースでふわりと。

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私が忘れられないのは、皇太子がこのサンクチャリーと呼ばれるコテージで、たったひとりの冥想の時間をすごされるとのこと。その空間をじっと、この目で見てひどく強く感じるところがありました。この家の造形も本当に特徴的。猛烈に惹かれるものがあるのでした。


ちなみに、予約制とはいえ、こうした一般公開見学は、皇太子が留守の日を選んで計画されるそうです。普段は完璧なトランキュリティ、静寂のときをすごすこの庭自体の本当の見え方をじっくりと想像するのもひとつの楽しみ方という気がします。

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それには、英国で印刷、デザイン、編集された「ENGLISH GARDEN 」の本を開くのが一番の近道かもしれません



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    プロフィール

    吉谷桂子

    (よしやけいこ)

    東京生まれ。英国園芸研究家、ガーデン&プロダクトデザイナー。

    7年間の英国滞在経験を生かした、ガーデンライフを提案。TV番組や雑誌等での企画、出演、講師を務める。また、国際バラとガーデニングショウや東京ミッドタウンのコンランレストラン「Botanica」の植栽デザインを担当。

    「吉谷桂子のコンテナガーデニング」(主婦の友社)他、著書多数。

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