The Vertical Garden パトリック・ブラン博士の講演会
過日、超レア、パトリック・ブラン博士の貴重な講演会が、渋谷の東急文化村で開催されました。私がブラン博士を知ったのは、10年ちょっと前のことでしょうか。もう、日本に帰ってきていたので、なかなか思うように本などの資料が英語版でさえも手に入りにくく、そのすばらしい壁面緑化の仕事の詳細がわかりませんでした。フランス語の本は手に入れましたが、何が書いてあるのか。さっぱり?
昨日は、日本語訳付きのお話しが聞けて大充実。
パリのご自宅の写真 ↑「エクステリア(屋外)とインテリア(屋内)の バーチカルガーデン(垂直の庭)は、極めて個人的な私のライフスタイルから来ています。朝はシャワーを浴びた後、ここで早朝の仕事をこなし、冬の寒い時期は、ここで日光浴をしながらコーヒーを飲む。私の仕事はそこから生まれる」
(時々、このオフィスをトカゲとか、カエルがうろつくそうです(エッ!)
「プランツハンティングで観た植物の生態にインスパイアされた仕事の数々....」
自分自身が愛する環境を自ら世界に広めている。自身の体験がもとになった自然界の再構築とデザインがベース。お手本んは自然界から。etc
そんな印象でした。博士はそもそも植物学者、プランツ・ハンターでもあります。昨日のお話しは、前半、サー・ジョセフ・バンクスがたどったプランツハンティングの地を、ブラン博士自身もプランツハンティングして回るなかで、発見したこと。インスパイアされた例をたくさんお話いただきました。
(原生している状態のニュージーランドのフォロミウム/ニューサイラン)
また
「現代のプランツハンターの仕事は、未知の植物を発見するだけでなく、 植物がどこにどのような状態で生息しているかを研究することも、大切な仕事になっている」
どこで、どのような生態で生息しているかを知ることで、それを的確に仕事に活かすことができている点にも注目です。やはり、重要なのが、プランツエコロジーです。
(同時に樹々が茂って、そこに枝同士がぶつかりあわないように風の道ができる。枝が重ならない。自然にできる風の道。”クラウン・シャイネス” というのだそうです。素敵な音霊!)
それにしても、キャプテンクック船長の探検航海の時代。サー・ジョセフ・バンクスといえども、十分な予防注射や海賊に対する十分な備えがあったとは思えません。バンクスの花譜集の見事な植物画の描写を残しているパーキンソン氏は、ボルネオ でマラリアに罹り探検中に死去。それでも、めげずに次から次へとプランツハンティングに出向いていった熱意に感服します。
(ロンドンのホテル、アトリウム/この7月にツアーメンバーと見学に行った際、数年前よりも植物が大きくなって迫力を増していました)
さまざまな、特にオーストラリアやニュージーランドの植物の紹介がスライドでなされる合間に、植物の紹介用語として、「建築的なフォルムの植物」が繰り返し登場していました。
「植物のこの、建築的な美しさを見て下さい」の言葉が繰り返されました。いわゆるアーキテクチャラル・プランツです。私も、常々、講演会で同じような言葉を使う、あるいはもっと使いたいと思っていましたが、これでいいのだと思ったり。
植物を構築的に検証し、組み立てる。植物の選択は、なによりも、プランツエコロジーが先ではありますが、
「庭を作るうえで、どんな種類を選ぶのかがもっとも重要な課題です」
普通は言葉ではありますが、ここが、私も強く共感し、深く心に残った言葉です。
今や世界的に活躍している博士ですが
今から10年ほど前に、ブラン博士の仕事にまっさきに注目したのは、現代美術の分野の人々だったそうです。わたしもちょうどそのころ、5歳の息子を連れて金沢21世紀美術館を訪ねました。
( 5年前に訪ねたフランス、ショーモンスル城のガーデニングイベント。今はここもびっしりの植物)
芸術家の心と、科学者の知識や技術。これは、庭の世界のすべてに言えることなのだと思います。
(株間が参考になりますね。使用しているのは、ポリアシッド・フェルトとのこと)
ブラン博士は今や世界じゅう。ヘルツォーク&ド・ムーロン(日本では、表参道のプラダビルで有名ですが。ここは緑化なし)やジャン・ヌーベル(パリのアラブ世界研究所やカルティエ現代美術財団(何年か前ににツアーで皆さんと見学に行きましたね)そして、、サーペンタイン・ギャラリー)といったキラ星の建築家と仕事を協調している仕事の数々。(心のどこかでジェラシーを感じつつ)
庭づくりは「Art Form 」今後、壁面緑化だけでなく、もっと美術と建築の分野と造園家が建設的に仕事ができていくとよいのに。と、思います。
日本の造園界全体にも、もっともっとアカデミックな芸術から現代美術にいたる、深い造詣が要求されるニーズが生まれると良いのですが。
博士のアウトフィットもユニークです。ファッションブログにも書いたのですが、私も博士へのオマージュで緑ルックで講演に行ったのですが、それで博士に誉められたのが嬉しかったのでした。やっぱり、緑の集まりには、緑で!
来年の9月オープンを目指して、山口県、新幹線 新山口駅に博士の作品が登場するそうで、今から楽しみです。
そして、12月23日〜翌年3月1日まで。「バンクス花譜集」の展覧会が開催されます。ぜひに!