庭ができるまで
温室を舞台にした花の展示。いままでも、この場所では、
いろいろなガーデンデザイナーやパークのスタッフたちによって、さまざまな展開があり、それぞれにデザインされ、きれいに花が咲いて、来場者の目を楽しませてきました。
ただし、ここを自分が担当するとは思いもよらなかったので、実は、お話が来たときに、イメージがわかず、悩みました。ここは、かなり、難しい場所だと感じていたからです。何が難しいといって、もともとの躯体(背景の構造物や温室独特の装置が、工夫しないと、案外いろいろ同時に、目に飛び込んでくる)をいかに隠すか、この場所で安定してうまく育つ植物と、お客様が見たい植物に、一致を見るのが難しいだろうと思っていたからです。
なので、これまでの「国バラ」で培ってきたノウハウ。サンクンガーデンといえば、中心は池だろうとか。花壇を掘り上げて池にするのは大変でしたが。なので、ここでは、アンデルセンの庭のバレリーナにシダの羽を付けて妖精に。どこかでオードリーヘップバーンの愛した庭の感じも。
イメージスケッチに描かれているデルフィニュームは、まだ花穂が上がっていませんが。
そこでまず、大切なのが、構造物のデザイン。これは、私の仕事、プロダクトデザイナーとして、ディテールの仕上げまでも、ちゃんとできたら、と。思っていました。
たとえば、この白いパネルの背景の淵は、ビスケット・パネルと名付けてマリーアントワネットのテントの縁取りにもでてくるデザインで。何十ミリ単位の比率が美しいのかをなんどか、鉛筆で書き直しそれを浜松の大工さんやフラワーパークのスタッフが作ってくれます。みんな上手に感じよく作ってくれて有り難かったです。このレーザーカッターで切り抜いた「妖精」もね。このゾーンは、花や妖精のシルエットを鑑賞するために作った場所、午後3時頃からとても美しい。花や葉が小粒で、散らかってみえがちな、ラークスパーやスカビオサが活躍しています。
拠点は多く、たとえば、この場所を変化させるにしても、う〜〜ん。
なにか構造物をデザインしなくては。
そこで頭にうかんだもの。「多肉植物のためのバロック・タブロー」
(これ、ニューヨークの友人宅の屋上ガーデンで見かけた、バロック風タブローの記憶から)ラフスケッチは、スタッフに伝えるためのもので、描く時間がなさすぎて、こんなのを描いて。(時間があれば、もっとちゃんと描くけれど)「こんな感じよ〜」それより、私が数値を入れた図面のほうを再現してくださいと。
その図面を描く際の、わたしの秘密のモジュール再現奥義をお教えしましょうか。美しいと思う写真(海外の構造物など)から三角スケールで比率計算をして割り出したものを土台に、自分の思うリアルなサイズに落とし込む。この方法は舞台美術の仕事をしていた30年前から続けてきた方法。西洋建築。見よう見まねでは日本人のDNAに作れない恐ろしく彫りの深い立体感があるからです。
庭の仕事、植えたい植物の発注も栽培も、何百株、何千株となるので本当に大変だと思いますが、構造物の発注もぞれぞれにデザイナーやスタッフの仕事なので、その精度というか、ディテールやモジュールがカッコ悪いと全部うまくいかなくなるので、実にこの図面に対し、理解して立体化してくれるか。
大工さんやフラワーパークのスタッフとのタッグマッチは本当に重要。
花の面倒を見るのは基本の仕事ながら、ありとあらゆる作業があるので、こうした庭の仕事に関わるフラワーパークのみんなを私は尊敬する。
で、この場所が
こうなりました。あれ?右端に花が植わってない?この左右の台座とARUN。かなり歪んでますが、それは直し難く。レンガがずれてるなとか。いろいろ、治したいところが、写真から判明すること多いです。
植栽のバランスや歪みの発見、特に、写真に撮って、モノクロで眺めると分かりやすい。とは、よく講演会でお話しますが、私もこの写真を撮ったのは、夜の8時前。もう、目では色も分からないけれど、歪みやバランスの修正は写真で。iPadなどで撮るといいですね。これは、コンテストに出品するハンギングやコンテナも、同じです。できあがったと思ったら、一旦写真を撮り、自分の目線を客観的にさせて、直したい部分に手を入れるのです。(5月の国バラ、ハンギングバスケットのコンテストでは、審査員を仰せつかっていますので、そんなことも、ヒントとしたいと思います。左右のバランス。絵画的な遠近感が狂わないように。とか。詳しくは拙著「庭の色」や「暮らしの寄せ植え」に再三書いています)
庭のデザイン。最初の全体計画から始まって、色彩計画から、徐々に改善があり、変化する部分も出てきますが、私の場合は、最初の計画+その場のインプロビゼーション。というか、その時々の植物たちの成長具合や、表情とのインプロビゼーションが大切だと思っているので、実は、直感的な即興芸術のような要素も、大切なのだ と思っています。だから、図面だけ渡して、別の人が植え付けするなどありえない!!!
それと、出来上がった庭の写真を撮るのは大事ですが、どの角度から撮るのか。鑑賞するのか。
も、重要。それによって、花の美しさを再発見したり、感動したり。いろいろ広がります。
花たち。ただただ、正面から漠然と見るものでもないのです。
そんなことを踏まえて、今年7月1日にスタートする「英国ガーデンツアー」でも、どこから見るのか。その都度の発見を同行の皆様にお伝えするのも、自分の仕事だと思っています。(つづく)